『ミミズと土』

ミミズと土 (平凡社ライブラリー)

ミミズと土 (平凡社ライブラリー)

今年はダーウィン生誕200周年で、『種の起源』出版150周年だそうだ(チャールズ・ダーウィン - Wikipedia)。そういやnatureで昨年あたりなんかやってたな。
ミミズはダーウィンが半世紀近い年月を費して研究した対象だ。『ミミズと土』はその集大成であり、そしてダーウィンの遺作でもある。そう、ダーウィンと言えばミミズだ。
本書の前半はミミズの習性、知性についての話題が中心になっている。ダーウィンによれば、ミミズは光を知覚できるし、ミミズは食べ物の味が分かるし、ミミズは葉っぱを穴に引き込む方法を考えることができるのだが、暖かさを求めて地表付近でボーっとしていると鳥に食われてしまうおっちょこちょいさんでもあるという。なんと愛らしい生き物だろう!!
後半はミミズが優れた埋め立て屋であることが語られる。ミミズにかかればローマ時代の建築物を地面の下に埋めておくことくらいなんてことない。そして、ダーウィンは実際に石ころだらけの原っぱが馬も自由にかけられるほど平坦な草原へとミミズの力によって生まれ変わる様を目撃している。
これらの驚くべき事実は、ダーウィンの脅威的な観察力と根気強さ、そして数多くの友人と、息子たちの助けがあってこそ明らかとなったものだろう。本書を通じてダーウィン自身と友人たちの手による観察事実が次から次へと提示され続ける。一気に読もうとするとちょっとうんざりするくらい。しかしその量に比例してダーウィンの推察の説得力は増して行く。
容易に原因を推定できる事実(ミミズが糞塊を地表面へ詰む)から、容易には原因を推定できないような事実(巨大な石が埋まっていく)の原因を演繹していく手法は『種の起源』同様に鮮やかで、現代の我々も十分参考にしうるものだと思う。