飽和溶存酸素量について(2)

前回: 飽和溶存酸素量について - もうカツ丼でいいよな

Wikipediaの表のソース

溶存酸素量 - Wikipediaの飽和溶存酸素量の表は、参考文献に挙げられている『水の分析 第五版』に載っていた(確認したのは四版だけど)。
これは実測値ではなくて、次のTruesdaleの式により計算されたものらしい。

ここでtはセルシウス度
Truesdaleの式は実測値に基づいて作られているのだろうが、元論文の全てを見ることができないので、どの程度の誤差があってどの程度の範囲で有効なのかは分からない。
なお、水蒸気飽和大気中の値を想定しているということなので、やはりそれで前回やや低い値が出たのかも知れない。
ちなみに元の式には塩化物イオン濃度による補正項が付いている。

ただ使い方が今ひとつ分からない。Sの値は"parts per thousand"で与えろと書いてある博論があった(https://theses.ncl.ac.uk/dspace/bitstream/10443/1009/1/Avery%2076.pdf ※ダウンロードに時間かかる)ので、重量パーミル(こういう呼び方があるのかは知らない)で与えればいいとは思うんだけど表に書いてあるような値が出ない。とりあえず海水とか塩濃度の高い水は測定しないので考えないことにする。

比較してみると…

それで、前回のと同じ比較を範囲を広げてやってみるとこんな感じになる。

青色がTruesdaleの式により計算した値。
CRCに載ってたやつは0℃から75℃の範囲で標準偏差が±0.36%と書いてあったので、それなりに信用できると思う。
Bunsenの吸収係数から計算した値も0℃から60℃の範囲の値から近似式を求めたので、60℃までの値は信用できると思う。
Truesdaleの式は3次式なので当然どっかで頭が下がってくるのだが、見た感じ40℃くらいが限界のようだ。
試しにCRCのやつとTruesdaleの式の値の差をプロットしてみるとこんな感じになる。

また、補正項も下に凸の二次式で、極値が34℃くらいなので、補正式も込みで使うなら30℃くらいが限度なんじゃないかと思う(補正項が二次式に従うのかどうかは知らないけど、多分従わないと思うので)。
名指しするのはあまり気分が良くないのだけど、適用可能範囲の点から見てこういうの(http://www.y-dkk.com/YPMS-48DO.pdfのp.54)はどうなのかなーと思ったりなんかしたり。多分マニュアル作成担当者、式をプロットしてみなかったんだろうなーと。

結局どれつかうか

CRC(86版)が参考文献に挙げてるIUPACのSolubility Data Seriesは1981年とちょっと古いんだけど、Truesdaleの式はさらにさかのぼって1955年(多分これ)なので、やっぱCRCのデータ使っとくのが間違いないんじゃないかなーと思う。
Truesdaleの式は所詮3次式だし、適用可能範囲が狭い。それに値も湿潤空気で計算しているにしてもちょっと過小評価されてんじゃないかなーというように見える。水蒸気分圧の分をどう計算に入れるのかよく分からないのでアレなんだけど。