地球型惑星と大気の構造

今季の気象予報士試験も1月27日と差し迫って参りましたね。ヤバイ。
まずは学科・一般知識を抑えましょう。
テキストは気象予報士かんたん合格テキスト 〈学科・一般知識編〉

太陽

表面温度約5,800℃、水素とヘリウムから構成される。
太陽に近い惑星では太陽風の影響が強い。

  • 太陽風:主成分は電離した水素。電流が流れる状態にある粒子線。

膨大な熱エネルギーは電磁波として放射される。放射強度は距離の二乗に反比例して小さくなるため、太陽から遠い惑星では受け取るエネルギー量が少ない。

惑星の大気構成

地球

酸素と窒素で99%(容積比)が構成される。

  • 窒素:78%
  • 酸素:21%

残る1%のほとんどはアルゴンで、二酸化炭素は0.04%(WDCGG解析の2011年平均濃度は390.9ppm)。
水蒸気は場所と時間による変動が大きく、0〜1%程度の範囲にある。
平均温度は約288K(15℃)

金星

大気圧は90気圧で厚い大気を持つ。
大気組成は二酸化炭素が圧倒的に多く、その温室効果もあり表面温度は約720Kである。
硫酸を主成分として持つ分厚い雲を持つ。

火星

二酸化炭素が中心で他に窒素を含む。
太陽から遠く、大気圧も6hPaと極めて薄いため、平均表面気温は180Kで昼夜の気温差が大きい。温室効果が大きいほど昼夜の気温差は小さくなる。

地球大気の起源

原始地球大気

水素やヘリウムが主成分だったと考えられている。これら軽い気体は太陽風の影響でほとんど吹き飛ばされてしまった。

二次大気

火山の噴火により水蒸気や二酸化炭素、窒素が放出された。
水蒸気は火山活動の沈静化に伴い、雲、雨、海と変化した。
原始の海は火山噴火に伴う塩化化合物や硫黄化合物を含み、酸性であった。これは次第に岩石中に含まれていたカルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムといったアルカリ金属によって中和されていった。
海に溶けきれない窒素と二酸化炭素が大気の主成分となった。

二酸化炭素固定

二酸化炭素は水に溶けやすいため、海中に溶けて石灰岩(炭酸カルシウム)となった。
二次大気に含まれていた二酸化炭素の大部分はこうして海中に固定されていった。

酸素の増加

中性化した海は生物が存在できるようになった。浅い海で進化した藍藻類の光合成によって酸素が作られ、大気に酸素が増えていった。
大気中の酸素はある程度以上の濃度になると紫外線の作用でオゾンを作り、オゾン層を形成して有害な紫外線を吸収するようになった。
そうして地上にも植物が進出できるようになり、現在の大気組成に近づいていった。

大気の鉛直構造

概要
  • 対流圏:地上から高度6〜16km付近までは気温が一定の割合で低下していく。この大気層を対流圏と呼ぶ。対流圏の上層を対流圏界面と呼ぶ。圏界面では-50℃程度になる。その他の大気層についても上層の事を「◯◯圏界面」と呼ぶ。
  • 成層圏対流圏界面から高度50km付近までを成層圏と呼ぶ。成層圏では気温が高度とともに上昇していく。圏界面では0℃程度になる。
  • 中間圏:成層圏界面から高度80km付近までを中間圏と呼ぶ。中間圏では気温が高度とともに低下していき、圏界面では-90℃に達する。
  • 熱圏:高度80kmから数百km上空までを熱圏と呼ぶ。熱圏では気温が高度とともに上昇していく。
対流圏
  • 厚さ:平均気温に比例し、高緯度地域で厚く低緯度地域で薄い。圏界面は連続ではなく、所々に不連続面がある。不連続面は南北の温度傾度が大きく前線帯となっている。
  • 運動:「対流」という名が示すように水平、鉛直方向の運動が活発である。
  • 水蒸気:他の大気層に比べて水蒸気を多く含む。水蒸気を含むことの出来る量は気温に比例するため、平均的には下層で多く、上層では少ない。
  • 気温:1kmの上昇で6.5℃の割合で低下する。この割合は「気温減率」と呼ぶ。
  • 地表面付近の気温:高度1500m未満までの層は地表面の温度変化に影響を及ぼし、及ぼされる。
  • 空気量:全体の約80%が含まれる。気圧は高度5kmの上昇で概ね半減する。
成層圏
  • 運動:「成層」の名は安定した状態を示すが、鉛直方向の話であって水平方向の運動は大規模に起こっている。成層圏は空気密度が低いので対流圏の運動が伝搬すると大気運動のスケールが増幅される。
  • オゾン:成層圏にはオゾンが多く存在し、太陽放射を吸収することによって熱源となっている。
    • オゾン生成のメカニズム:低緯度帯(赤道付近)の成層圏で主に生成される。紫外線によって電離した酸素原子が酸素分子と結合することでオゾンとなるが、不安定なオゾンは紫外線を吸収してすぐに酸素分子と酸素原子に電離してしまう。
    • 成層圏のオゾン輸送:成層圏下層には低緯度から両極地方へ向かう南北循環があり、また成層圏中上層には夏極から冬極へ向かう南北循環がある。これをブリューワードブソン循環と呼び、オゾンはこの循環によって冬の高緯度地域に集まる。しかし、冬に冬極のオゾン濃度が高くなるわけではない。北極では3月から4月にオゾン濃度が高くなるが、南極では9月から10月にかけてオゾン濃度が極めて低くなる。このとき、南緯40から60度にかけてオゾン濃度が高くなっている。南半球には大規模な山岳がないため偏西風の蛇行が少なく、極渦と呼ばれる現象が起きやすい。極渦は冬季に極付近に形成される低気圧性循環の渦のことで、この渦周辺の緯度50〜70度に強い西風が吹く。この西風を極夜ジェットと呼ぶ。極夜ジェットは風速が強いためオゾンの輸送が起こりにくい状態となり、南極で10月ごろにオゾン濃度が低くなる現象が起こる。これはオゾンホールの一因と考えられている。偏西風が蛇行しやすい北極付近ではオゾンホールは発生しにくい。
  • 気温:オゾン密度が最も高いのは高度25km前後であるが、圏界面付近の方が密度が小さいため熱容量が小さく温まりやすい。そのため上層ほど高い気温分布となっている。
  • 真珠雲:水蒸気の少ない成層圏でもまれに雲が発生する場合がある。
  • 成層圏突然昇温:春先にかけて下層からの大規模波動が伝播することで低気圧性の循環場が突然崩壊、高気圧性の循環となり気温が十数度上昇することがある。
  • 成層圏準2年周期振動(QBO):赤道上くんの対流圏界面付近から成層圏下部では西風と東風が約26ヶ月周期で交代している。原因は重力波と考えられている。
    • 重力波:重力によって変動した流体がもとに戻ろうとする際に発生する波動。
中間圏
  • 運動:成層圏同様に鉛直方向の運動は起きにくいが水平方向の運動は大規模に起こっている。
  • 気温:酸素分子が熱を吸収し、二酸化炭素分子が赤外線を放出してその平衡で気温が決まっている。冬季より夏季の方が気温が低いが、冬季には下層大気の大規模波動が伝播して鉛直熱輸送が起こるためと考えられている。
  • 夜光雲:夏に特殊な雲が発生する場合がある。
  • 大気組成:中間圏海面までは乾燥大気の比率はほぼ一定となっている。大気の大規模な循環が原因であって拡散が原因ではない。
熱圏
  • 気温:光解離でイオン化した酸素や窒素の原子、イオンが紫外線やX線を吸収するため、上部では2000℃付近まで上昇する場合もある。しかし、ほぼ真空であるため例え熱圏にいたとしても熱さを感じることはない。気温は太陽放射の有無により大きく影響される。
  • 電離層:電子とイオンに分かれた電離状態で存在する層があり、電離層と呼ばれる。熱圏には複数の電離層が存在する。下層からD、E、F1、F2層と名付けられており、D層はよく電波を吸収する。放射の強い上層ほど電離密度は高く、また放射の少ない夜間は電離層は小さくなる。

地球大気における循環

  • 存在比:海洋(97%)、雪氷(2.4%)、地下水(0.6%)、河川・湖沼(0.02%)の順で、気象現象の原因となる大気中水蒸気は0.001%に過ぎない。
  • サイクル:蒸発から降水までのサイクルは約10日である。
  • 降水量:地球平均では1000mm、日本は1800mm。
二酸化炭素
  • 濃度:大気中には0.04%(約400ppm)の二酸化炭素が含まれ、現在も上昇している。
    • 年変化:植物の活動や呼吸量の変化の影響により、晩夏から秋に低く、晩冬から春に高い。変化の振幅は中緯度で最も大きい。これは植生の多さと季節変化があることに起因している。平均増加率については大気循環の影響で場所による差はほとんどない。
  • 排出源:海洋表面、土壌、陸上生態系、化石燃料消費の順。
  • 吸収源:陸上生態系、海洋表面の順。海洋での吸収量は海水温度が上昇すると減少するため、植生の減少の他海水温上昇も二酸化炭素濃度上昇の原因となる。