雲の種類と降水過程

十種雲形

高度別分類
  • 上層:350hPa以上(約8km以上)
  • 中層:650〜350hPa未満(約3〜8km未満)
  • 下層:地表〜650hPa未満(地上〜約3km未満)

対流圏の層厚は温度に比例して変化し、日本付近では夏は12〜16km、冬は6〜8kmである。
積乱雲は鉛直方向に上層まで発達した雲だが、雲底が下層なので下層雲に分類されている。

雲の性状と上昇気流の速度

性状による分類:雲は対流性と層状性の2種に分類できる。

  • 対流性の雲:上昇気流の速度が1〜10m/s以上に達する場合がある。
  • 層状性の雲:数cm/s〜十数cm/sと対流は穏やか。

多くの雲は層状性で、激しい気象現象は対流性の雲に伴って発生する。
積乱雲は発達時は強い上昇気流の影響で水滴が大きく発達し、上昇気流で支えきれないほどに雨粒が発達すると大粒の雨をもたらす。
一方で層状性の雲は上昇気流が弱いため降水があっても弱い場合がほとんど。
強い上昇気流が起きやすいのは寒冷前線付近で寒気が暖気の下に潜り込むような場合である。熱帯地方では下層が湿潤温暖となる場合が多いので、対流性の雲が発達しやすい状態が続く。
層状性の雲は温暖前線で暖気が広く滑昇しているような場合に発生しやすい。
対流性の雲の最盛期は上昇気流と下降気流が混在し、降水の変化が大きくなる。強度の変化が大きい雨雪をしゅう雨(驟雨)やしゅう雪(驟雪)と呼ぶ。にわか雨とも言う。
一方で層状性の雲による降水は強度が一定で連続性の雨となりやすい。地雨とも言う。

代表的な雲形と発生しやすい気象現象

一般に降水をもたらすのは下層雲に含まれる積乱雲、積雲、層雲、層積雲と中層雲の乱層雲などであり、その他の雲はほとんど降水をもたらさない。雨粒ができても地上に到達するまえに蒸発してしまうためである。

  • 積雲:日常的に発生しやすい雲。夏、晴空の中にポコポコと浮いている雲。冬季に西高東低の気圧配置のときにも発生しやすい。地表付近の大気の加熱や成層状態が不安定なときに発生しやすい。成層状態が不安定な場合は積乱雲となる場合もある。降水はあってもにわか雨程度の場合が多い。
  • 積乱雲:鉛直方向に大きく発達した雲。下層が温暖湿潤、中上層が乾燥冷涼な場合(大気の状態が不安定)に発生しやすい。激しい気象現象(突風、落雷、大雨、雹、竜巻など)を伴う場合が多い。
  • 層雲:地表面付近の層状の雲。海上で多く、霧も層雲に該当。温度差のある空気の混合や冷たい地表面への温かい空気の移動で凝結により発生する。雨があっても霧雨程度。
  • 層積雲:下層の弱い寒気移流が起きているときに発生しやすい。冬型の弱い気圧配置や、海上から吹き付ける冷たい北東気流が起きるときに発生しやすい。
  • 乱層雲:広範囲に温暖空気が穏やかな上昇気流を起こす気象状況で発生しやすい。前線の北側や温帯低気圧の中心から北東側が該当。
  • 高層雲:温帯低気圧の数百km東側、前線の300km以上北側で発生しやすい。
  • 高積雲:うろこ状やさざなみ状の形状。上面の冷却と下面からの地球放射による熱の供給で規則的な上昇気流と下降気流の配列ができている。
  • 巻層雲:高層雲が発生する原因と同様のメカニズムで発生。春・秋では天気が下り坂である。
  • 巻積雲:高積雲と同様のメカニズムで発生。
  • 巻雲:羽毛状、筋状の雲。大気の成層状態が安定でも風の鉛直シアが大きいと上層の気流が乱れて発生する場合がある。
霧の種類
  • 放射霧:日没から日の出前まで天気がよく、風が弱い時、放射冷却で地表面付近が強く冷却されることで発生する。
  • 移流霧:冷たい地表面に温かく湿った空気が流れこむことで発生する。夏の海霧が典型例。
  • 蒸気霧:冷たい空気が温かい海面上に移動して生じる霧。
  • 前線霧:前線付近で発生する霧。前線付近では温度差の大きい気団が接するため発生しやすい。
  • 滑昇霧:山の斜面を昇る湿った空気が気圧低下に伴って気温が下がることに寄って発生する霧。

降水過程

雲粒と雨粒

雲の平均粒子半径は10μm程度、雨粒との境界は50μm程度である。
雨粒の平均粒子半径は1mm程度で、4mm以上の雨粒は大気粘性と重力の影響で落下中に分裂して小さな雨粒となる。
平均粒子半径で100倍の比があるので、体積では100万倍の比となる。

水蒸気の過飽和

飽和水蒸気圧を超える水蒸気圧を持つ状態を過飽和と呼ぶ。
小さな水滴は体積に対して相対的に大きな表面張力を持っており、体積を最小にしようとする力が強く働く。そのため、空気中の水蒸気を取り込みにくい状態となっている。飽和水蒸気圧は水平な水面に対する値なので、小さな水滴しか存在しない条件では飽和に達する水蒸気圧はより大きくなる。
これは水平面からの蒸発よりも霧状の水の蒸発のほうが早いことの理由でもある。細かい水粒子ほど存在しにくいのである。
粒子半径が1μmの水滴は相対湿度ほぼ100%で平衡状態にあるが、粒子半径0.01μmでは相対湿度112%程度ないと平衡状態に達しない。

エーロゾルと凝結核

極めて小さな水粒子は極めて大きな水蒸気圧が無ければ発生しないが、自然界では大気中に浮遊する微粒子であるエーロゾルの作用により雲が発生する。
エーロゾルはそれ自身が0.005μmから20μmといった大きさを持っているので、最初からある程度の大きさの水滴ができるということの他、化学物質が溶解することで飽和水蒸気圧を下げるという働きもある。
エーロゾルは2つに大別できる。

  • 大陸性エーロゾル:土壌微粒子が巻き上げられたもの。直径は小さいが量は多い。
  • 海塩性エーロゾル:波しぶきの蒸発によって出来るミネラル成分の析出したもの。直径は大きいが量は少ない。
拡散過程

小さな雲粒に水蒸気分子がくっつくことで水滴が成長する過程を拡散過程と呼ぶ。
拡散過程での質量の増加は水滴半径と過飽和度に比例するが、半径の増加は半径に反比例して少なくなっていく。よって雨粒まで成長する過程ではない。

併合過程

大きさの異なる雨粒は落下速度が異なる。大きな雨粒は小さな雨粒を巻き込みながら落下していく。この過程を併合過程と呼ぶ。
雨粒へ成長するための重要な過程であり、大きさの異なる雲粒、雨粒が多く存在することが必要である。

冷たい雨と温かい雨

雲粒は過冷却の状態にあることが多いが、-20℃以下では過冷却の水滴は減少し、-40℃以下では全てが氷晶雲となる。水滴の氷結速度を早める核のことは氷晶核と呼ぶ。
氷に対する飽和水蒸気圧は小さいので、水雲と氷晶雲が共存していると氷晶雲が急激に成長する。
中緯度帯では雨粒が落下の過程で蒸発潜熱を奪われ一旦氷晶となる場合が多い。
このように降水の過程で氷晶を経験した雨を冷たい雨と呼ぶ。
熱帯地方の雲などは雲頂部でも温度が0℃を下回らず、降水過程で氷晶を経験しない場合がある。このような雨を温かい雨と呼ぶ。

雲粒と雨粒の最終落下速度

最終落下速度

重力と空気抵抗が釣り合った時の落下速度を最終落下速度と呼ぶ。
雨粒の最終落下速度は雨粒半径の平方根に比例する。半径が2倍になれば最終落下速度は√2倍(約1.41倍)、3倍ならば√3倍(約1.73倍)となる。