熱力学の基礎

基礎基礎基礎全然基礎。

原子と分子

原子の構造
  • すべての物質の最小構成単位。
  • 大きさは1Å程度。電子顕微鏡でギリ見えるかどうか。
  • 原子核は正の電荷を帯びた陽子と電荷を帯びない中性子からなり、その周りを負の電荷を帯びた電子が回っている。
  • 原子が結合したものが分子で、多くの分子は2つ以上の分子を含むが、希ガスのような単原子分子もある。
周期表と元素の原子量
  • 気象予報士試験的には20番まで覚えればOK(「水兵リーベ僕の船七曲りシップスクラークか」までで20番)
  • 原子量に端数があるのは同位体のせい。
地球大気の平均分子量
  • 窒素78%、酸素21%、アルゴン1%として細かいものは無視して計算すると平均分子量は28.96になる。
  • 28.96という数字を覚えること。
  • 水の分子量は18なので水蒸気は空気より軽い。湿潤空気は乾燥空気より軽い。
モルとアボガドロ数
  • アボガドロ数:6.02×10^23
  • 1アボガドロ数 = 1mol
  • 1molの原子 = 原子量gの重さ
  • 気象学ではキロモル(1kmol = 1000mol = 6.02×10^26)という単位を使う場合もある
  • 1molの気体分子は0℃、1気圧の元で22.4Lの容積を占める。これは気体の種類によらない。

ボイルの法則、シャルルの法則

分子の運動と圧力

圧力は分子運動が原因で生ずる。分子の数が多いほど、運動が激しいほど(=熱運動が活発なほど)圧力は大きくなる。
よって圧力は分子数と温度に比例する。
また、同じ分子数で体積が大きくなれば圧力は小さくなる。圧力は体積に反比例する。

ボイルの法則

温度一定のもとでは気体の圧力が体積に反比例するという法則。圧力をP、体積をVとして、

  • PV = K

Kは比例定数。
気象学では圧力の単位としてhPa(=100Pa)が多用されるが、計算上ではPaまたはN・m^-2を用いること。

シャルルの法則

圧力一定のもとでは気体の体積は絶対温度に比例するという法則。0Kの時の体積をゼロと考え、気温が1K上昇すると0℃(≒273K)の時の273分の1体積が増加すると考える。0℃の時の体積をV_0として、体積V

  • V = \frac{V_0}{273}t+V_0

あるいは、Kを比例定数として

  • V = KT
ボイル・シャルルの法則

ボイルの法則とシャルルの法則を「気体の体積は絶対温度に比例し、圧力に反比例する」、という法則にまとめる。
数式で表せば、

  • \frac{PV}{T} = K

理想気体の状態方程式

理想気体と標準状態
  • 理想気体:ボイル・シャルルの法則は分子間力や分子の大きさを無視しており厳密なことを言うと成立しない。そこで、ボイル・シャルルの法則が成り立つと仮定した理想的な気体を理想気体と呼ぶ。気象学の範囲では理想気体とみなして差し支えない場合がほとんどである。
  • 標準状態:0℃、1気圧の状態
気体定数

標準状態の1molの気体についてボイル・シャルルの法則の比例定数を計算すると、8.312Jmol^-1K^-1という値が出る。
この値は気体の種類によらず一定であり、普遍気体定数と呼びR^*で表す。
なぜRにアスタリスクを付けてわざわざ「普遍」と冠すのか(「一般」の場合もある)についてはすぐ後に明らかになる。

気体の状態方程式

気体がnmolあるとしてボイル・シャルルの法則を考えてみると、

  • \frac{PV}{T} = nK

となる。さらに変形して、

  • PV = nR^*T

この式を理想気体の状態方程式と呼ぶ。
また、気体の分子量をMとしたとき、質量mはn×Mで表現できる。ここで、R^*/M = Rという値を導入すると、理想気体の状態方程式は次のように書き換えられる。

  • PV = mRT

この方程式は「その気体における」状態方程式となる。また、Rは「その気体における」気体定数となる。
例えば、乾燥空気の状態方程式を表したい時は、乾燥空気の気体定数であることを主張するためにdを添字として用い、

  • PV = mR_dT

と書いたりする。気体定数を普遍気体定数と呼んだりアスタリスクを付けて区別したりする理由がここにある。
要するに気象学では気体の数だけ状態方程式があるのである。