前回までは一般知識で今回から専門知識。
気温の観測
気温の観測場所と観測機器
- 観測場所
- 常に決まった地表面高度(日本では1.5m、積雪がある場合は積雪面から1.5m)
- 輻射熱があまり強くない、ある程度の広さが芝生で覆われた場所(露場)
- 直射日光が当たらない風通しの良い場所
地上観測の気温観測では立地や熱の影響を考慮した補正は行わない。一方、高層観測ではセンサー部に日射が当たることを考慮した補正が行われている。
- 観測機器
- ガラス温度計:水銀温度計を用いる。取り扱い、移動や設置が容易。
- 金属製温度計:バイメタルを利用したもの。誤差が大きい。
- 電気式温度計(白金温度計):白金の抵抗値が温度とともに大きくなることを利用した温度計。下部から空気を取り込む筒状の構造で、上部には傘とファンが付いている。空気を取り入れる下端が地上から1.5mの高さになければならない。センサーの高さではないことに注意。数秒から十数秒程度の急激な温度変化は測定できない。雨の降り始めは管内に結露した水滴の蒸発潜熱で一時的に気温が下がることがある。
最高気温と最低気温の定義
- 最低気温:午前0時から午前9時までの間の最低気温
- 最高気温:午前9時から午後18時までの間の最高気温
寒気が日中に前進してくるような場合では予報の最低気温よりも日中の気温が下がるような場合もあり得る。
地表付近の気温の特徴
- 地表面温度に大きく依存する。
- 海面温度はほとんど日変化しないが、台風や発達した低気圧で上下の混合が起こると海面温度は下がる。
気温の日較差
- 晴れ>曇り>雨
- 晴天時は日中は太陽放射で昇温しやすく、夜間は放射冷却で冷却されやすいため。
近年の温暖化傾向
ここ十数年は急激に温暖化が進んでおり、その一因が二酸化炭素の排出である。
実際には様々な要因が複雑に絡み合い気候システムが決定するので、二酸化炭素のみで温暖化が起こっていると言い切ることはできない。
2006年12月〜2007年2月は顕著な暖冬であったが平均気温は1〜2度高い程度であった。それほど平均気温上昇の影響はシビアに現れる。
摂氏、華氏、絶対温度
- 摂氏:水の凝固点を0度、沸点を100度としてその間を100等分したもの。1742年にアンデルス・セルシウスが考案。
- 華氏:水の凝固点を32度、沸点を212度としてその間を180等分したもの。1724年にガブリエル・ファーレンハイトが考案。
- 絶対温度:分子運動が0となる温度を0Kと定義した温度。1Kの目盛りは1℃の目盛りに対応している。0Kは-273.16℃。
風の観測
風向・風速とは
- 風速:0.1m/s単位まで観測する
- ノット:1ktは1海里/hの速さ。1kt = 1.852km/h。ノットの半分が概ねm/s。
- 風向:風が吹いてくる方向。16方位が普通だが天気予報では8方位の場合も多い。国際通報式(SYNOP)や気象台の観測機器では36方位で表す。何れの場合も最も数値の大きいものが真北で時計回りに数値が増す。
風の観測機器
風の観測の時間と場所
平均風速・最大風速・最大瞬間風速の定義
- 平均風速:10分間の平均風速
- 最大風速:10分間の平均風速のうち最も大きいもの
- 最大瞬間風速:最も強い風速の瞬間値
- 最大風速と最大瞬間風速の関係:平均風速(最大風速)の1.5倍から2倍程度が最大瞬間風速と言われている。この倍率を突風率と呼ぶ。風速が大きいほど突風率は小さくなる。また、陸上の方が突風率は大きい。
- 風の息:構造物や地形、熱の不均一の影響で生じる風の強弱。
- 地上風については観測値データの補正は一切行わない。
飛行場における風速観測
- 離着陸への影響を鑑みて2分間の平均風速を用いる。
- 平均風速測定時間が短いので、最大風速は大きくなる。
降水量の観測
転倒枡形雨量計
積雪の観測
- 雪尺:表面を白く塗装し、cm単位の目盛りをつけた木製の角柱。白色は太陽放射の影響を逓減するため。定点観測の他に必要であれば観測を行う場合がある。
- 超音波式積雪計:L字型ポールから地上へ超音波を発射し、反射までの時間から積雪を測定する。
- 積雪は1時間おきに定時観測を行なっている。
雨量観測で起こる誤差の要因
- 風
- 受水口や貯水器面の濡れ(少雨で影響大)
- 蒸発(少雨、乾燥時に影響大)
最も大きな要因は風で、強風は機器付近で乱流を発生させ雨滴の捕捉率を低下させる。
相対湿度・水蒸気圧・露点温度の観測
湿度の観測方法
- 乾湿計:湿球と乾球2つの温度計の温度差から湿度を求める。
- 塩化リチウム露点計:露点温度を直接測定したのちに計算によって湿度を求める。
- 電気式湿度計:セラミックや高分子化合物の電気抵抗変化を利用する。高湿度から低湿度へ変化する際に実際の変化よりもやや遅れて観測するという欠点がある。
地上気圧の観測
地上天気図とは
地上天気図では1000hPaを基準に4hPaごとの間隔で等圧線を引く。20hPaごとに太線を引く。
地上天気図は観測地点の気圧を海抜0mの値に換算したのちに作成する。
気圧の観測
- 単位:hPaを用いる。
平均的な地上の気圧
- 1気圧 = 1013.3hPa
- 大気圧は1cm^2当たり約1kg重
気圧の観測器
- 水銀気圧計:他の機器の標準に使う場合がある。0度の時に構成をする。重力による補正が必要。温度に敏感に反応するので、温度変化の少ない室内で空調機から離して設置する。
- アネロイド気圧計:ガラス面を軽く叩いて衝撃を与えて使用する。
- 電気式気圧計
海面更正
- 現地気圧:観測地点での測定値
- 海面気圧:現地気圧を海抜0mに換算(海面更正)した値
海面更正をする場合、海抜0mから現地までの大気の状態はその時季に対応した平均的な状態と仮定する。誤差を避けるため海抜800m以上の観測点では行わない。逆転層など特殊な成層状態では誤差が大きくなる可能性がある。通常、気温減率0.5度/100mとして平均的な湿度状態からわかる補正幅を参考に計算する。計算には静力学平衡の式と気体の状態方程式を用いる。
日照の観測
直達日射、散乱光、全天日射
- 直達日射:太陽から平行線で受ける光。瞬間値や一定時間の積算値を観測。
- 全天日射:直達日射と散乱光の和。日の出20分前から日没後20分までの積算値を観測。観測は積算値のみ。
直達日射の有無は農作物の生育にとって重要であるため瞬間値の観測も行なっている。
日照率
- 可照時間:その日の最大の日照時間
- 日照率:可照時間に対する実際に日照のあった時間の比率
- 日照がある:直達日射が120W/m^2以上の場合を言う。物体の影をつくることができる程度。
代表的な日射計の種類
混濁係数
- 大気に浮遊する微粒子量の目安。
視程の観測
大気の混濁
- 大気の混濁:大気の濁り具合を指して言う。大気の混濁度は見通しに影響する。
視程の観測
- 視程:観測地点から水平に360度見渡し、もっとも見通しの悪い方位における指定距離を言う。
雲の観測
10種雲形と雲の正常
- 下層雲:層雲、層積雲、積雲、積乱雲
- 中層雲:乱層雲、高層雲、高積雲
- 上層雲:巻雲、巻積雲、巻層雲
積雲と積乱雲は対流性の雲、その他は層状性の雲である。
降水強度が10mm/h以上と強い場合はほぼ対流性の雲であるが、降水強度が弱い場合はどちらか判断することはできない。
雲形別の成因と特徴
- 層雲:温度の高い空気の温度が下降して発生。霧は層雲が地表面に達して視程1km以下となったものである。降水はあっても弱い。
- 層積雲:下層で弱い寒気移流がある時に発生しやすい。弱い冬型の気圧配置や、北東気流の入りやすい気圧配置の時。
- 積雲:層積雲と同じ条件で発生。あるいは、大気の一部が暖められて上昇気流となった場合も発生する。
- 乱層雲:連続性の雨をもたらす典型的な雲。暖気が寒気をゆっくりと上昇する場合に発生しやすい。
- 積乱雲:非常に発達した対流性の雲。圏界面まで達することもある。成層状態は条件付き不安定(対流不安定)の場合に発生しやすい。
- 高層雲:明るい光が広範囲に透けて見える雲。「かさ」は作らない。春や秋では天気が崩れる前兆。
- 高積雲:うろこ状の特徴的な雲。巻積雲に似るが地表に近く房が大きい。春や秋では天気が崩れる前兆。
- 巻層雲:高層に現れる薄い雲。氷晶からなるため「かさ」を作る。乱層雲上層からかなとこ状に噴き出る雲も巻層雲となる。春や秋では天気が崩れる前兆。
- 巻積雲:大気上層に現れるうろこ状の雲。
- 巻雲:上層に現れる筋状の雲。積乱雲の上層から空気が発散している時、風の鉛直シアが大きい時などに発生しやすい。上空のジェット気流の南側(暖気側)は風の鉛直シアが大きいため発生しやすい。ジェット気流の南側で見られる巻雲をジェット巻雲と呼ぶ。
雲量の観測
- 雲量:天空のうち雲が占める割合。3割が雲ならば雲量3。
- 10分雲量:0〜10に1+、10-を加えた13段階で判断する。
- 8分雲量:0〜8で判断する。国際通報式(SYNOP)。
天気を決める場合は大気現象を優先する。例えば雨が降っていれば雲量がいくつであろうと雨となる。
高度別に雲量を求めてそれを合計した場合、必ずしも地上から観測した全雲量と一致しない。部分的に重なる場合があるため。
雲の観測要素
- 雲の高さの観測:地上から雲底までを周辺の山などを参考に決定する。不明な場合は×。
- 雲の向きの観測:やってくる方位を8方位で雲形別に判断する。不明は×、停止は-。
- 雲の状態の観測:世界気象機関(WMO)は気象資料の交換時に空全体の特徴としての雲の状態を通報すると定めている。形状や高度別に細かく観測する。
大気現象の分類と天気の種類
大気現象の分類
- 煙霧:肉眼では見えない乾いた粒子が大気中に浮遊
- ちり煙霧:風で巻き上げられたちり、砂が風のおさまった後も大気中に浮遊
- 黄砂
- 煙
- 降灰:火山灰が降っている
- 砂じんあらし:ちり、砂が強風で高く巻き上げられている
- 高い地ふぶき:積もった雪が風で高く巻き上げられている
- 霧:小さな水滴により視程1km以下
- 氷霧:小さな氷の結晶で視程が悪い
- 霧雨
- 雨
- みぞれ:雨と雪が混在
- 雪
- 霧雪:小さく白色の氷の粒が降っている
- 細氷:小さな氷の結晶が徐々に降っている
- 雪あられ:白色の氷の粒
- 氷あられ:氷の粒の周りに薄く水滴が氷結した粒が降っている
- 凍雨:水滴が氷結したり、雪が溶解後に再氷結したりしてできた氷の粒が降っている
- ひょう:氷の粒や氷の塊で、透明な層と半透明な層が交互に積み重なっている
- 雷電・雷鳴:雷電は電光+雷鳴。
大気現象の詳しい種類
大気現象は大気水象、大気じん象、大気光象、大気電気象に大別され、さらに下位で細かく分類される。
天気の種類
観測で使用する天気は15種類に分類される。
- 快晴:大気現象なし。雲量1以下。
- 晴:大気現象なし。雲量2以上8以下。
- 薄曇:雲量9以上。巻雲、巻積雲、巻層雲が見かけ上もっとも多い。
- 曇:雲量9以上。上記以外の雲が見かけ上もっとも多い。
- 煙霧:煙霧、ちり煙霧、黄砂、煙、降灰によって視程が1km未満。または全天が覆われている。
- 砂じんあらし:砂じんあらしにより視程1km未満。
- 地ふぶき:高い地ふぶきにより視程1km未満。
- 霧:霧または氷霧により視程1km未満。
- 霧雨
- 雨
- みぞれ
- 雪:雪、霧雪、細氷が降っている。
- あられ:雪あられ、氷あられが降っている。
- ひょう
- 雷