トマト・ナス・キュウリの世界における単収推移

ちょっと気になったので調べてみた。データは主にFAOSTATから。

トマト

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国は日本の他にオランダとスペインと中国を選んだ。深い理由は無い。浅い理由ならある。

  • オランダ:施設園芸がスゴイ(単収的な意味で)
  • スペイン:施設園芸がスゴイ(施設一箇所に集まりすぎ的な意味で)
  • 中国:施設園芸がスゴイ(面積的な意味で)

トマトに話を戻すと、日本がここ40年大して単収が変わらない間にオランダは遥か彼方へ行って、スペインに追いぬかれ、中国に追いつかれそう、という感じ。
中国が2000年ごろから急激に伸びてきているのは施設面積の増加の影響では無いかと思う。1980年に1万haだったのが1995年には50万haを超え、今は300万haあるとかで、まさに桁違いに伸びている*1

ナス

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ナスも日本は長期停滞。最近スペインが急激に伸びている。中国には既に抜かれてしまった。残念。オランダは最初から圏外である。
ちなみに、イギリスではナスをeggplantではなくaubergineと呼ぶらしい。理由は調べてない。

キュウリ

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キュウリは多少日本健闘している様子があるがスペインに追いぬかれ、中国に追いつかれそうで、オランダは遥か彼方。
ちなみにgherkinというのはピクルス用の小さいキュウリのこと。

オランダ

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この業界だと二言目にはオランダみたいなところがあって、若干飽きてきた感も否めないオランダ。
ただ、95年頃からそれほど顕著な単収増加を見せていないのと、必ずしも安定して伸びている訳では無いのは意外。トマトなんかは単収100t目指して伸びまくってる印象があったのに。ただこの統計は施設も露地もなんでもかんでも引っ括めての平均なので、何か統計上のからくりがあるのかもしれない。
一方、オランダのシステムは資源多投型で、2000年以降の天然ガス価格高騰から経営がかなり苦しくなっているとかいう話もあり*2、他にもスペインが良い野菜作るようになったから国内の野菜価格がヤバイとか、市場原理に従って収益性の高いトマト推し進めすぎたとか何か色々な話があるが、結論としてはみんな色々言っててなんだか良く分からんというところ。

ついでに)スペインの施設園芸ってこんなの


スペイン
航空写真表示にすると何か白く見えるが、これが全部ハウスらしい。スペイン全部だと66,000haくらいの面積があって(オランダは1万ha、日本は6万haくらい)、写真に見える周辺で30,000haくらいあるという。
もともとアドラ市でブドウの栽培が盛んだったところ、ブドウの栽培棚の上にプラスチックフィルムを乗せると冬でも野菜が作れる!と気付いたのが1950〜1960年頃のことらしい。そんなわけでアドラ市の古いハウスは天井が平らだとか*3
ただこんな感じでハウスが密集していると当然害虫なんかは酷いことになりがちで、それでやむを得ずということだとは思うんだけど、天敵昆虫の利用がここ数年で急激に進んでいる。例えば、トマトでは2012年の時点で50%のトマト生産者がNesidiocoris tenuis(和名をタバコカスミカメと言い、近年日本でも各地で利用が進められている)という天敵を導入している*4。トマトは10,000haくらいあるらしいので、大変なことである。製薬会社儲かってるに違いない。
スペイン語読めると情報収集捗りそうなんだけどなぁ。

*1:邸ら, "中国における施設園芸の現状", 農業気象, 54(2):167-170,1998

*2:別冊現代農業2013年7月号『農家が教えるトマトづくり』

*3:稲吉洸太, "スペイン・", 施設と園芸, No.158(2012):47-51

*4:VILA, E., et al. IPM strategies in tomato crops in Spanish greenhouses: Effects of cultivars and the integration of natural enemies. IOBC-WPRS Bulletin, 2012, 80: 245-251.