ユーザーの平均継続期間が解約率の逆数であることを等比数列を使わずに理解する

ユーザーの平均継続期間は「解約率=一定」と仮定すれば「1/解約率」で示せる。

これについてはユーザの平均継続期間が「1/解約率」で求められることの数学的証明 - it's an endless world.等比数列を用いたわかりやすい証明があるが、「解約率=一定」とした場合の平均継続期間は「故障率=一定」とした場合のMTBFと計算上は同じなので、MTBFの計算に関する考え方を流用すると等比数列を使わずに示すこともできる。

MTBF(平均故障間隔)

MTBF(Mean Time Between Failures = 平均故障間隔)はあるシステムが故障するまでの平均動作時間で、システムの稼働時間/故障回数として求める。

例えば100個の装置を100時間観察し、その間に2つ装置が故障した場合、MTBF


\mathrm{MTBF} = \frac{100 \times 100}{2} = 5,000\ (\mathrm{hours})

のように延べ稼働時間から求める(cf. 平均故障間隔 - Wikipedia)。要するに、100個の装置100時間稼働を、1個の装置10000時間稼働と同一視する。

ユーザーの平均継続期間

現在のユーザー数をx_tdt時間経過後のユーザー数を x_{t+dt}とすれば、その間の解約ユーザー数はx_t - x_{t+dt} = -dx_tである*1。このとき、平均継続期間Uは、次式で求められる。

U = \frac{x_t dt}{-dx_t}

要するに、ユーザー1人についてx_t dtという期間中に-dx_t回解約があるとみなして、平均契約期間を計算する。サービスを解約してもなぜかすぐに再開する1人のユーザーを仮定するのだ。これは上述のMTBF計算の場合と同様の考え方である。

次に、単位時間中のユーザーの離脱率が一定値rだとすると、ユーザー数は現在のユーザー数x_tに離脱率rを乗じた速度で減少する。

すなわち、ユーザー数の変化速度\frac{dx_t}{dt}は次式で表される。

\frac{dx_t}{dt} = -rx_t

これを先程の式と比較すれば、

U = \frac{1}{r}

であり、平均継続期間は離脱率の逆数であることが示せる。

*1:dt = (t+dt) - tdx_t = x_{t+dt} - x_tであるため、dx_tx_tが時間とともに減少するという仮定のもとでは負の値であり、これにマイナスを付けたものが解約ユーザー数となる