湿度諸量の計算法(5) - 水分活性、不快指数、実効湿度 -

これまでのお話。

今回で一旦区切りにしようと思う。
今回は湿度諸量とはすこし異なる、生活の上で用いられる湿度に関連した指標について説明する。

水分活性

水分活性は以下のように定義される。

物質の水分と平衡にある空気の相対湿度の1/100の数値

密閉した容器の中に食品などを入れておくと、容器内の相対湿度はある値で平衡となる。要するにその時の相対湿度が水分活性である。
水分活性は食品の保存性に影響する。=0.65でも繁殖できる耐乾性のカビもあるが、たいていのカビは=0.80以下では繁殖ができない。乾燥食品や塩蔵食品、ジャムなどは水分活性を下げることで保存性を高めている食品の代表である。

不快指数

不快指数は温度と湿度の関数として「蒸し暑さ」を数値化した指標である。
1957年にアメリカでサムという人が空調設計のために考案したと言われているのだが、ちょっと探したところでは元の文献などは見つからなかった。
また、不快という言葉を使わずに温湿指数と呼ぶ場合もあるらしい。
不快指数には幾つかの計算法がある。

一番上は気温と相対湿度から、二番目は気温と露点から、三番目は気温と湿球温度(通風していないもの)から求める計算式である。各々多少は異なるが概ね同じような値が出る。
不快指数70を超えてくると蒸し暑さを感じはじめ、75-80では汗をかきはじめるようになる*1
3つの計算式をRで定義すると以下のようになる。

DI1 <- function(t, U){
  ## 入力:t…気温(℃)、U…相対湿度(%)
  ## 出力:不快指数
  0.81 * t + U/100 * (0.99 * t - 14.3) + 46.3
}

DI2 <- function(t, td){
  ## 入力:t…気温(℃)、td…露点(℃)
  ## 出力:不快指数
  0.99 * t + 0.36 * td + 41.5
}

DI3 <- function(t, tw){
  ## 入力:t…気温(℃)、tw…通風なしの湿球温度(℃)
  ## 出力:不快指数
  0.72 * t * (t * tw) + 40.6
}

実効湿度

乾燥した日が続くと木材が乾燥して火事が起こりやすくなる。
前日までの乾燥度を加味した湿度の指標が実効湿度である。実効湿度は次式により求める。

ここでは当日の平均相対湿度、日前の平均相対湿度である。係数は0.7を用いる。
用いる日数については一週間分もあれば十分であろうと思われる。使えるだけのデータを用いれば良いが、一ヶ月分使ったところで大差はない。
また、前日の実効湿度がわかっていれば、次式から実効湿度を計算できる。

実効湿度が50%以下、当日の最小湿度が30%以下で火災の危険性が高いと言われる。
Rで計算式を定義しよう。

EU <- function(U, EU1 = NULL){
  ## 入力:U…相対湿度(%) ベクトル
  ##     :EU1…前日実効湿度(%) 入力時は相対湿度は当日分のみで可
  ## 出力:実効湿度(%)
  if(is.null(EU1)){                     # 前日の実効湿度なし
    (1 - 0.7) * (U[1] + sum(0.7^(1:(length(U)-1)) * U[-1]))
  } else {                              # 前日の実効湿度あり
    (1 - 0.7) * U[1] + 0.7 * EU1
  }
}

参考文献まとめ

*1:上田(2000)による。なお、Wikipediaの記述ではもう少し緩い基準である(不快指数 - Wikipedia)。