湿度諸量の計算法(4) - 露点温度、湿数 -

これまでのお話

前回は蒸発に関わるパラメータの説明をしたので今回は結露に関するパラメータの説明をしよう。

露点

水蒸気を含む空気を冷やしていくと、空気中の水蒸気が凝結し水滴となる。物体の表面でこの現象が起こった時、結露と呼ばれる。
その時の温度を露点と呼ぶ。温度であるため単位は℃となる。
定義は

湿り空気の温度を低下させていく時蒸気が凝結を始める温度。この温度での相対湿度は100%、飽差は0mmHgとなる。

である(『新訂 農業気象の測器と測定法』)。
なお、露点と湿球温度は似ているが異なる。湿球温度は乾湿計における湿球の温度である他に、飽和に達するまで断熱的に空気を過湿していった時に達成される最低温度という意味もある*1。過湿によって温度を下げていくと湿度が上がっていくので、その空気の露点も上がっていく。よって露点<湿球温度である。
過湿冷却では露点まで冷やせないし、湿球温度まで冷やしても結露は始まらないということである。

露点の測定

露点は直接測定することができる。
例えばコップに水と氷と温度計を入れてコップ内の温度を下げていき、表面に結露が見られた時点の温度を読み取ればそれが露点である。
自動測定が可能なタイプとして、塩化リチウムの吸湿電導性を利用した塩化リチウム露点計がある。これは保守性に優れるため現在でも気象観測用途で使用される場合がある(cf.http://www.jma-net.go.jp/hakodate-airport/kiki.html)。

露点の計算

気温、相対湿度が分かっている場合に露点を計算するためには、

  1. 水蒸気圧を計算。
  2. その水蒸気圧を飽和水蒸気圧として持つ空気の気温を計算。

という2つのステップを踏む。
2つ目のステップでは飽和水蒸気圧を求める関数の逆関数が必要であるが、Goff-Gratchの式の逆関数を求めるのは手間なので、以下のMurrayの式の逆関数を求めよう。

ここでは気温であり、a=17.2693882、b=237.3(a, b何れも水面上の場合)、である。
計算手順は省くが、逆関数は以下のようになる。

Rで関数を定義すると以下のようになる。

dew <- function(t, U){
  ## 入力:t…気温(℃)、U…相対湿度(%)
  ## 出力:露点(℃)
  -(log(GofGra(t)*U/100/6.1078) * 237.3) /
    (log(GofGra(t)*U/100/6.1078) - 17.2693882)
}

GofGra(t)は気温(℃)から飽和水蒸気圧を求める関数で湿度諸量の計算法(1) - 相対湿度 - - もうカツ丼でいいよなで定義した。

湿数

気温と露点の差を湿数と呼ぶ。定義は簡単でである。Rで定義すれば、

dew.dep <- function(t, U){
  ## 入力:t…気温(℃)、U…相対湿度(%)
  ## 出力:湿数(℃)
  t - dew(t, U)
}

である。
湿数はあまり使わない値のように思えるかもしれないが、高層天気図などでは日常的に使われている(cf.気象庁 | 高層天気図)。
例えば「アジア500hPa・300hPa高度・気温・風・等風速線天気図(AUPQ35)」を開いて、500hPa天気図*2(2ページ目)を見てもらいたい。ここには上空の気温などが書かれているのだが、気温は2行で表示されている。上段が気温で下段が湿数である。
目安だが、高層天気図では湿数3℃未満を湿潤、3℃〜6℃未満をやや湿っている、12℃以上(6℃以上とする時もある)の大きな湿数に対しては乾燥していると呼ぶ。
気温と湿数から相対湿度を求める関数をRで定義してみよう。

dewdep2rh <- function(t, dd){
  ## 入力:t…気温(℃)、dd…湿数(℃)
  ## 出力:相対湿度(%)
  GofGra(t-dd)/GofGra(t) * 100
}

適当に計算してみると分かるが、湿数3℃未満は概ね相対湿度80%以上に相当する。

参考文献まとめ

*1:乾湿計における湿球温度は感温部の形状や風速によって左右されるため実際には若干異なる。

*2:高層天気図は高度として気圧を用いている。気象観測に用いるラジオゾンデは気圧を直接測定するのでこちらの方が便利なのである。そして等圧線の代わりに等高度線を用いる。等圧面で考えると気圧と高度は対応関係にある。なお、500hPaは高度で言えば4,900m〜5,700m付近に相当する。