大気における放射

まだまだ基礎。きちんと押さえておかないと点数は取れない。

電磁波と放射

波の基礎知識
  • 波長:波が1サイクルの間に進む距離。文字λ。
  • 周期:波が1サイクルする間にかかる時間。
  • 周期:波が1秒間に何サイクルするか。単位Hz。
  • 振幅:波の正の極大値と負の極大値の絶対値。
  • 波高:波の峰から谷までの高さ。

気象学では波長をもとに電磁波を分類する場合が多い。

電磁波の波長の種類

散乱

散乱・屈折・反射
  • 散乱:電磁波が原子・分子・微粒子に当たり、そこから周囲に広がる二次的な電磁波が生じる現象。
  • 屈折:光や電磁波が密度の異なる不連続な物質層を通過する際に進行方向が少し変化する現象。
  • 反射:光や電磁波が物質の表面で跳ね返される現象。
レイリー散乱

空が青く、夕焼けが赤く、海が青い原因。
レイリー散乱は電磁波の波長が散乱を起こす粒子半径より非常に大きい(10倍以上)のときに発生する。
レイリー散乱の散乱強度は電磁波の波長の4乗に反比例する。つまり、電磁波の波長が短いほど強く散乱される。
青色光(0.45μm)は、赤色光(0.7μm)の6倍も強くレイリー散乱する。そして、青色よりも強く散乱される紫の光は太陽光線にはあまり含まれず、対流圏の前に既に散乱されてしまっていることから日中の空は青く見える。夕方は太陽が大気を通る経路が長くなるので、青色が散乱されてしまって赤色が残る。
レイリー散乱は電磁波の入射方向に強く起こり、法線方向には弱く起こるという性質もある。

ミー散乱

雲が白い原因。
ミー散乱は電磁波の波長と散乱を起こす粒子半径が同じくらいのときに発生しやすい。
散乱強度は電磁波の波長にはあまり依存しない。エーロゾルや雲粒の半径は可視光の波長と同じくらいなのでミー散乱を起こす。
散乱強度が電磁波の波長に依存しないということはどの色も同じように散乱されるということで、そのため白く見える。

幾何光学的な電磁波の進行

雨粒や氷晶の直径は電磁波の波長よりも非常に大きい。そのため、可視光線は雨粒や氷晶に当たると幾何光学的な屈折、反射を起こす。
虹やダイヤモンドダストは幾何光学的な電磁波の進行が原因である。
虹は太陽を背に受け、反対側の方位に雨粒が広く存在しているときに見えやすい。光線の屈曲率は波長により異なり、短いほど大きい。通常、虹は外周に長波長、内側に短波長を持つ同心弧として見える(外から赤・橙・黄・緑・青・藍・紫)。
この通常見える虹は主虹と言うが、主虹の外側にやや不明瞭な虹(副虹)が見える場合がある。副虹は雨粒の内部での反射が二回起こると発生する。副虹は主虹とは逆に長波長が外側に配列する(外から紫・藍・青・緑・黄・橙・赤)。

地球大気における放射

地球の公転と太陽熱

地球の公転軌道は真円ではなく楕円である。太陽に最も接近するのは1月上旬(冬至の10日後)で、最も遠ざかるのは7月上旬(夏至の10日後)。また、地軸の傾きにより北半球は冬季に太陽に近づき夏季に遠ざかる。
この太陽と地球の距離の関係は、北半球では季節変化による温度変化を若干和らげるように働くが、その作用はごくわずかである。
季節変化の主な要因は地軸の傾き(公転軌道面に対し23.5°)による太陽から受け取る熱量の変化である。

南中高度と赤緯

正午における太陽の高度角を南中高度と呼ぶ。南中高度は以下の式で計算できる。

それ以外の時期では赤緯を用いて計算する。

  • 赤緯赤緯は天体の位置を表す座標である。天球の存在を仮定すると、恒星は天球に張り付いて回転しているように見える。しかし天の北極(北極星)と天の南極の天体は全く動かない。天の北極の赤緯を90°、天の南極の赤緯を-90°とする。天の北極と天の南極の中間の線が天の赤道になる。要するに、その天体の天の赤道からの角度が赤緯である。天の北極と天の南極は地球の自転軸を延長した線と交わり、天の赤道は地球の赤道を延長した面と交わる。赤道面は実際にはわずかずつ移動しているので、見かけの赤緯という意味でその時点の赤緯を視赤緯と呼ぶ。赤緯については理科年表などには一日毎の値が載っており、計算してくれるサイトもある(cf.http://www.am-consulting.co.jp/topmenu/data/0002_000114_taiyoukoudo.html)。

太陽の赤緯をδ、緯度をφとして、南中高度αは

  • \alpha = 90^{\circ}-\phi+\delta

で求められる。

太陽定数

地球大気の上端で太陽に垂直な平面が単位面積(1m^2)、単位時間(1秒)あたりに受ける太陽放射エネルギー量を太陽定数と呼ぶ。太陽定数S0は1.37×10^3Wm^-2である。約1400Wm^2と考えても良い。

太陽高度角と放射強度の変化

太陽光線に対し垂直な面が受ける放射強度をI_Eとすると、太陽高度角がαのときの単位地表面が受ける放射強度I_gは次式で表される。

  • I_g = \sin \alpha \times I_E

例えば入射角が30°の場合、地表の受ける放射強度I_Eの1/2となる。

放射に関する法則

ステファン・ボルツマンの法則

「黒体放射のエネルギーの総量は、黒体の絶対温度の4乗に比例する」という法則をこう呼ぶ。
単位時間に黒体が放出するエネルギーをI^*、黒体の温度をT(K)、ステファンボルツマン定数(5.67×10^-8Wm^-2K^-4)を\sigmaとすると、

  • I^* = \sigma T^4
アルベド

放射を受けた時の反射率をアルベドと呼ぶ。
地球の平均アルベドは0.3である。すなわち、地球が放射を受けた時3割は吸収されずにそのまま反射する。
アルベドは雪(0.8〜0.95)や厚い雲(0.8前後)で大きく、裸地(0.1〜0.25)や森林(0.1〜0.2)で小さい傾向にある。

プランクの法則

すべての物体は温度に応じた電磁波を放射している。
電磁波の放射スペクトルが温度の関数となるという概念をプランクの法則と呼ぶ。

キルヒホッフの法則

吸収率と放射率は等しくなるという法則。
良く吸収する物質は良く放射するということである。

ウィーンの変位則

プランクの法則は放射スペクトルを示すが、ウィーンの変位則は放射スペクトルの極大を示す。
放射強度が最大となる波長は黒体の絶対温度Kに反比例するという法則をウィーンの変位則と呼ぶ。

太陽放射と地球放射

短波放射と長波放射

太陽の表面温度は5780Kである。プランクの法則とウィーンの変位則から可視光付近にピークを持つスペクトル分布であることがわかる。実際、太陽放射の47%が可視光領域に属している。残りは紫外線と赤外線である。
一方で地球の表面温度は255Kである。ピークは赤外領域にある。
これらの関係から、太陽放射を短波放射、地球放射を長波放射(または赤外放射)と呼ぶ。

大気による太陽放射の吸収

大気上端では太陽放射はほぼ5780Kの黒体放射スペクトルと同じスペクトルを持っている。
地表付近では大気の吸収や雲、エーロゾルの散乱で全体的に放射が弱くなる他、空気に含まれる各気体分子が強く吸収する波長域が弱くなっている特徴を持つ。

対流圏上層における太陽放射吸収率

対流圏上層までにオゾン、酸素によって0.31μm未満の紫外線はほぼ完全に吸収される。
赤外領域の放射は水蒸気、二酸化炭素、メタン、オゾンなどによく吸収される。これらのガスは温室効果ガスとも呼ばれている。
8〜12μm付近の赤外域は大気による吸収率が悪く、窓領域と呼ばれている。窓領域は赤外線による気象観測などに利用されている。