大気の熱力学 - 理想気体の状態方程式

最近気象学をちょっとずつ勉強してるんだけれども、数式や記号に微妙な方言があるようで大したことないところで躓いてしまう。なので少しずつ理解した部分をまとめていこうと思う。ていうか最近Project Euler手に負えない問題出てきたのでブログのネタが無い。
とりあえずの教科書は一般気象学で、基本的にこれに沿って勉強していく。他の本も参照しつつぼちぼちと。
今回は状態方程式中心。

理想気体の状態方程式

理想気体の状態方程式(以下単に状態方程式)というとよくあるのは

という表現で、nがモル数(物質量)でRが気体定数で…という感じだが気象学のテキストだと似てるけどちょっと違う表現が出てくる。
まず、いわゆる気体定数は一般気体定数や普遍気体定数と呼び、で表す(なお、)。そして、モル数の代わりに質量をそのまま使う。また、質量の単位としてはkgを使い、モルの代わりにキロモル(kmol)を使う。
分子量Mの気体がm kgあったとしよう。そのときキロモル数nは

である。
状態方程式に、nをm/Mに置き換えると

となる。ここで

なる数Rを定義し、気体定数と呼ぶ。すなわち、一般気体定数を分子量で割った物が気象学における気体定数であり、値は気体の種類に固有となる。
気体定数Rを用い状態方程式を書き換えると、

となり、よくある表現と形の上では同じになる。mが質量(kg)であることRは気体の種類に固有な気体定数であることの2点に注意しよう。
状態方程式は様々な表現が可能だが、次の2つがよく使われるので覚えておこう。

  • 密度()を用いた表現
  • 比容()を用いた表現

乾燥空気の気体定数

混合気体の圧力pは各成分気体の分圧の和に等しい」これをダルトンの法則(Dalton's law)と呼び、式で表現するなら

である。
状態方程式混合気体を構成する各成分気体に対しても成立する。

よって混合気体状態方程式を次のように記述できる。

ここで、混合気体は各成分気体のキロモル数を足しあわせただけのキロモル数、すなわち

だけ存在しており、質量も同様に各成分気体の質量を足しあわせただけ、つまり

だけ存在している。
ここで混合気体の平均分子量を次のように定義する。

そして混合気体気体定数を次のように定義する。

実際の大気の成分比を元にして乾燥空気の平均分子量気体定数を計算すると、

  • (窒素が主成分なので窒素の分子量28.01に近い)

となる。

湿潤空気の気体定数

実際の大気は乾燥空気と水蒸気の混合気体である。
乾燥空気の状態方程式をここで

とおき、水蒸気の状態方程式

とおく。eは水蒸気分圧である。
乾燥空気の密度と水蒸気の密度の比を混合比wと定義する。

また、乾燥空気と水蒸気の気体定数の比をε(≒0.622)とおく。

湿潤空気の圧力はダルトンの法則より乾燥空気の圧力と水蒸気分圧の和だから、

これを変形して湿潤空気の状態方程式の形にしていく。
状態方程式、w、εを用いて変形すると、

湿潤空気の密度は乾燥空気の密度と水蒸気の密度の和なので、

これを用いると、次の式が得られる。

この式から湿潤空気の気体定数に相当する部分を抜き出すと、

であることがわかる。混合比wは通常十分に小さいので、マクローリン展開してwの2次以上の項を捨てるように近似すると、

ここで仮温度を次のように定義する。

仮温度を用いると、湿潤空気に対する状態方程式

と乾燥空気の状態方程式と見かけ上同じ形式で記述できる。
ただし、wが0.03を超えるようなことはあまりない。そのため、気象学では湿潤空気に対しても通常は乾燥空気の状態方程式をそのまま用いる。